カレル橋からプラハ城を見る
2023年の3月下旬、1986年9月の訪問から約36年ぶりでプラハの街を再び訪れることができました。昨年、横浜臨海部で行われた櫻井義夫氏のアドルフ・ロース作品のスライドレクチャーを受けて、神奈川の日本建築学会有志が、ロース作品が多く残るプラハとウイーンを中心に世紀末建築を巡るツアーを計画、それに便乗して訪れたのでした。
プラハは、最初の訪問のときにはチェコスロバキア社会主義共和国の首都でしたが、1989年のビロード革命により共産党政権が崩壊、1993年以降はチェコ共和国とスロバキア共和国に分離独立、現在はチェコ共和国の首都となっています。
2021年ブログの「プラハ訪問記」の中で、今は西欧の資本が入り込んでしまって、昔のプラハの街がもっていた豊かな物語性が無くなってしまったのではないか、と心配のことばを書きました。それを確認できる機会がこんなに早く来るとは思っていなかったのですが、結論から言うと、確かに街はきれいに整備され、外国資本も入り込んだことで少しテーマパーク的なものが垣間見えることもありますが、張りぼてではない、確かな歴史の堆積、物語性はしっかりと街に根付いているように感じました。
プラハらしい装飾的なファサードをもつ街並み前の写真の街並みとちょうど道を挟んで反対側にあるダンシングビルプラハの街で空爆を受けて空地になっていた数少ない場所につくられた
コロナ禍がようやく落着きを見せはじめ、海外ではマスク姿の人々がほとんど見られないような状況で、春の訪れを感じられるあたたかな気候の中、久しぶりの自由を満喫しているかのように街は大勢の旅行者で溢れていました。その解放されたような空気感は確かに36年前のプラハには微塵もありませんでしたが・・・。有名な天文からくり時計のある広場で時刻を待つ多くの観光客旧シナゴーグ前に集まる多くの観光客
前回、訪れた時には街を歩いて巡っただけだったのですが、今回はいくつかの歴史的な建物内を見学しました。市民会館や修道院の図書館、キュビズム美術館などですが、市民会館内には大きなホールの他、小規模なスペースが多くあり、どれも装飾性の高い、見ごたえのあるものでした。中でも世紀末の世界的なアーティストのアルフォンス・ミュシャが担当した部屋は、壁面に描かれた絵画の質が高く、見ごたえがありました。前回訪問時と同じようなアングルの市民会館とthe powder tower市民会館夜景市民会館内ホールミュシャ担当の部屋 壁画が美しい
また、修道院の図書館はその時代の知識の宝庫として威厳もあり、まるで宮殿のようです。ウイーンでも国立図書館を見ましたが、どちらも国の威信を表す場でもあり、最上級の装飾で飾られています。現代の図書館はなるべく利用しやすいように、気軽にそこで過ごせるようにと権威性のようなものがどんどんなくなっていますが、どこかには人々の知の遺産としての敬意のようなものもあってほしい気もします。ストラホフ修道院図書館ストラホフ修道院図書館の天井が高い部屋
ウイーンの国立図書館はより権威的ストラホフ修道院のある高台からプラハの街を見渡す 左はプラハ城
プラハ駅舎は前回の訪問時に当然、訪れていたはずですが、あまり良く覚えていなかったので、また、直前のBS放送で取り上げられていて良さそうだったので、自由時間を利用して見てきました。歴史的な遺産としての駅舎はもちろん、良かったですが、それ以上にワクワクして写真を撮ったのはホームのある部分で、繊細な鉄骨フレームと天窓が開放的な空間を創り出していました。このような仕事を見ると、西欧の人びとの鉄骨フレームの使い方のうまさを感じます。(ht)
プラハ駅舎の元のメインホール 今は地下部分が主動線ホーム側駅舎屋根ホーム側駅舎屋根 アーチ型の部材など意匠性に富んでいる
教会の壁面に掲げられたプーチン批判の横断幕が今を映す