フォートワースのキンベル美術館ーはじめてのアメリカ2
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ダラス・フォートワース空港からタクシーで、ウォーターガーデンという水をテーマにした公園に最初に行きました。フィリップ・ジョンソンが設計に関わっているので見ておきたかったのです。複数の水景が展開する公園でしたが、残念ながら行ったときにはいくつかの水が流れてなく、2,3の水景だけしか体験できませんでした。平日のせいか人出が少なかったので、節約していたのかも知れませんが、タクシーの運転手も初めてだとか言って、一緒に公園までついてきました。あまり認知されていないのかも。それでも、すり鉢状のダイナミックな滝と、対照的に長い壁面を静かに伝わり流れ落ちる水の風景を楽しむことが出来ました。夏場などはきっとすばらしい住民の憩いの場になっているのでしょう。少し季節が早すぎました。
キンベル美術館は巨匠ルイス・カーンの晩年の作品で開館が1972年。一方のメニル美術館は1987年開館で、当時中堅のレンゾ・ピアノの作品。でも、キンベルもメニル美術館も私的なコレクションを展示する目的で計画され、おまけに、メニル夫婦は元々カーンに設計依頼をしていたそうです。しかし、1974年のカーンの死去によってたち切れになってしまった。メニル美術館を設計するピアノの頭にはキンベルの存在が大きく占めていたことでしょう。その後、キンベル美術館の増築をピアノが担当し、2013年に開館しています。
キンベル美術館を特徴づけるトップライトですが、以前、工事中の躯体で中央にスリットが開いただけの状態の写真を見たことがありました。それを見ると、何の変哲もない開口で、実際に光を受止め、天井面に導いている特殊な形状の反射板がデザイン的にいかに優れているか、再認識することができます。メニル美術館の反射板はフェロセメントだそうですが、こちらは細かいパンチングメタルでできているようです。反射した光がコンクリートの天井面を銀色に輝かせています。
外観は、一見工場のようにシンプルなサイクロイドボールトの繰返しですが、内部空間は単位空間の繰返しのような単調さはなく、ほとんどの場所で1ユニットを飛び越えて連続しているので広がりが感じられ、また、効果的に中庭が挿入されているので開放感も生まれています。講堂や中2階の図書室部分だけは1ユニットだけの空間でしたが、講堂は階段状の床で高さが変化、図書室は床付近に長く連続する水平窓があり、それぞれの特徴を獲得しています。ただ、図書室の照明は、天井高が低い空間に大きめの吊り照明が並んでいて、ちょっと圧迫感がありました。