パリにてー鉄骨の教会―
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旅行最後の訪問地パリでは、初心者お決まりのルーブル美術館やエッフェル塔、コルビュジェの初期住宅作品や当時ホットな話題のラ・ビレット公園の現場などを見てまわりました。ここではその中で印象に残っている建物等についていくつか紹介したいと思います。
まず、紹介したいのが鉄骨造の教会です。これは、鉄骨造の橋、駅舎や植物園などの建造物を紹介した美しい写真集に唯一掲載されていた教会の例で、実物を見たくて探して行きました。


Jules Astrucが設計して1902年竣工したノートルダム・トラヴァイユ教会の外観は、伝統的な石造のイメージをそのまま踏襲していました。このことは、本には紹介されていなかったので実物を見て驚いた記憶があります。しかし、中に入ると繊細で美しい空間が現れました。


内部構成は天井の高い身廊と両側の低い側廊という一般的なもの、正面祭壇手前には大きなアーチを描く開口部と4本の柱が上部の壁を支えています。その壁面上部には頂部が円弧を描く3組セットの開口部が中央部を少し高くしてあり、柔らかい表情を演出しています。よく見ると壁面には縁を飾る控えめな花模様などが描かれています。鉄骨に注目すると、使われている鉄骨そのものは柱が鋳鋼のようですが、他は特に飾り気がない素朴な材料です。しかし、とても丁寧に慎ましくデザインされ、つくられている印象があります。それらがアーチを描いたりクロスに配置されていたりと、言葉に表すと何気ないものなのですが、幾重にも重なる細い部材のアーチやクロス、それらと背景の建物の開口部や壁面のささやかな装飾がつくりだすリズム感が清々しいのかも知れません。




