CHAT architects のSTREET HOTEL & Department of ARCHITECTURE Co.のThe COMMONS
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CHAT architects のSTREET HOTEL
STREET HOTELはラブホテルだった建物の中庭側をワンスパン減築してプールを設け、シティーホテル兼リゾートホテルとして再生したものですが、その再生手法が面白く、既存外壁面に鉄骨で組上げた奥行1m程度のフレームを取付け、そこを内部化してソファーやベッドとして客室の質を高めたり、フレームに床を張り、マットを敷いて外部ベッド?としたりしています。プールのある中庭側では夜間に映画が上映されますが、それを各部屋から張出した外部ベッドから眺めることもでき、まるで劇場のボックスシートのような雰囲気になります。脇には簡単なリフトも用意されていて、1階にあるレストランやバーから食べ物や飲み物を運び上げられ、昼寝などにも便利そうです。
鉄骨はメインが一辺40mm程度の角パイプで、それ以外の手摺や手摺子はもっと繊細なフラットバーや丸鋼が使われていて、全体が家具や窓飾りのような華奢な印象ですが、それによって既存の空間がとても豊かになっています。独特の曲線のパターンは伝統的な窓枠などの意匠からとりだしたアノニマスなもののようですが、この曲線が全体をさらにやさしい雰囲気に仕上げています。
建築を構成する壁、床、屋根(天井)のようなしっかりした要素ではなく、装飾的で華奢なフレームを既存壁にまとわらせ、その部分を、空間を形成する主要素として展開する手法はとても興味深く、建築の新たな可能性を感じさせるものです。一年中気候が温暖で開放的な住居の伝統を持つタイならではの発想のようにも感じます。
エントランス前にはテントの庇の下にいくつかの家具が置かれていますが、ここは地域の人も気軽に利用できるようです。ホテルのオープニングではここでパーティーが開かれ地域にお披露目したようです。
Department of ARCHITECTURE Co.のThe COMMONS
The COMMONSは飲食を中心とした店舗が複数入るビルで、一部内部化された部分もありますが、大部分が外部化されていて、気持ち良い風が通り抜けるようになっています。天井には大きな天井扇がいくつか配されていて、人工的にも風を送るようになっています。地下1階から地上4階まで階段を巡りながら上ると、途中の広い階段部分にはテーブルや座布団のようなマットが適所に置かれていて、そこでは飲み物をテイクアウトしたり食べ物を注文して運んでもらうこともできるようです。
日本だったらすぐに全体を内部化してしまいそうです。最近の日本の建物は巨大化して、中にさまざまな施設が同居し、外に出なくともそこで事足りるショッピングセンターのような建物が増えていますが、便利さと引換えに何か大事なものを失っているようで気になります。このような動きに対抗するように、小ぶりの集合住宅を含めた住居などでは自然環境に対してだけでなく地域社会に対して開くための半外部空間の試みが最近、さまざま見られます。このThe COMMONSもSTREET HOTELも人々が集い、互いの知識や時間,空間を共有できる場になるように意図されているのかも知れません。それには、半外部空間の気楽さが相応しいのかも。(ht)