HEDMARK MUSEUM 2 展示物と展示空間
|
ここでは、遺跡以外の展示物と展示空間について紹介します。
コの字型平面の建物全体で先の中央部とは異なり、左右両翼部分の構造は既存遺跡の壁内側にしっかりした木の柱を等間隔に床面まで下ろし、上部の木造小屋組みを支えています。遺跡壁の上にも木造の壁が載っていますが、こちらは遺跡に荷重を加えないように、主要な柱からの片持ち梁的に処理されているようです。小屋組みの形式はコの字中央部と同じで、全体の一体感を生み出しています。
内部の床面は主にRC造の入れ子構造になっていて、木造部分とは縁が切られています。
コの字型平面の左翼部分には上端部に階段教室風のホールとコーナー部に衣服などの展示空間、その下にも小さな展示空間があります。それらは階段やスロープなどで繋がれており、順路はさまざまに設定可能です。
右翼部分は全体が展示空間ですが、左翼部での動線の考え方がさらに存分に展開されています。最上部には対角線上に2つのRC造の床が入れ子状に浮かんでおり、隙間にはスロープが入り込んだり、そこに座れば簡單な講義ができる広めの階段が下部の展示室とを繋ぎます。下部の展示室では上部に床があるところではそのスケールに応じてさまざまな小物が展示され、2層分吹抜けの空間ではスロープに接して大きな展示物が置かれたり、吹抜けを介して上部の展示物を眺めることもできます。
上下を繋ぐ動線には建物外壁に沿った外部ブリッジもあり、気分を変えて中庭の遺跡などを眺めながら次の展示空間に進むこともできます。
全体はそれほど広い施設ではないのですが、さまざまなスペースが用意されていて、鑑賞ルートもいろいろありそうです。行き止まりがなく回遊できるので実際よりも広く感じます。また、展示物は一つひとつの見せ方が工夫されており、それぞれ個別に鉄骨やガラスを巧みに利用して展示されていますが、そのデザインがとても洗練されていて、展示物の魅力を十分に引き出しています。12年間、丁寧に時間をかけて隅々まで考えられている印象です。
私たちもこんなにじっくりと時間をかけて取り組める丁寧な仕事をしてみたいものです。(ht)