HEDMARK MUSEUM(ヘドマルク博物館)1
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スヴェレ・フェーンの建築作品を見ることが今回、オスロ訪問の主な目的でした。
私たちがはじめて出会ったスヴェレ・フェーンの建築はベネチア・ビエンナーレ会場の北欧館(1962)です。すごくシンプルな覆いだけの建築なのに、既存樹木をたくみに取り込んだり、大スパンを軽々と覆う構造、梁の間からこぼれ落ちる光の美しさなどに強い印象を受けました。また、その他の国々のパビリオンが建設された時代の影響を大きく受けているのに対して、時代を超えた普遍性も強く感じました。
その後、東京芸大で世界巡回展(2004)が行われ、そこで数々の建築作品に接し、展示されている模型の写真を全部撮った記憶があります。
今回、訪れた建物はオスロから列車で北へ1時間20分ほどのハーマル(Hamar)にあるヘドマルク博物館(1962-74,2005)とオスロ市内の建築博物館の増築棟(2007)です。
ヘドマルク博物館は12年という長い歳月をかけて徐々に出来上がった建物のようで、一部に比較的新しく増築された部分(2005)もあります。
本体のコの字型平面の建物中央部が実際の遺跡を中心に保護・展示している部分です。ここでは、遺跡として残っている組積造の壁の上に木造の小屋組みを載せ、組積が崩れた部分では一部柱を伸ばして屋根を支え、壁の孔には透明ガラスの風雨よけを施した上で内部化し、遺跡上にRC造のブリッジを架け渡し、ブリッジから遺跡を眺めたり、一部では遺跡レベルまで回り階段で降りて、間近から眺められるようになっています。ブリッジ途中には、RC箱状の3つの展示室がありますが、それらは注意深く遺跡壁からは縁を切られ、各々1本の円柱とブリッジからの腕によって支えられています。この箱状展示室には屋根部分を構成するRC天井はなく、直接木造の屋根に接していますが、その屋根は全面ガラス張りでサンサンと光が降り注ぎます。薄暗い遺跡の空間から明るい光溢れる展示室に入るとそこにはオブジェ的な遺品が象徴的に飾られているという感じです。
2005年にオープンした2つの増築部分は、一方は小ぶりのRCヴォールト屋根の覆いで半地中化されており、中庭のオブジェ風の扱いです。
ヴォールト屋根の部分は本体部と同じように遺跡の上にRC造のブリッジが架かり、見学者はブリッジの上から遺跡を眺めるだけですが、木造の部分にはブリッジはなく、自由に遺跡の中を歩けるようになっていて、階段状になった遺跡をさまざまなレベルから体験できます。ここでは屋根や壁のスリットから差し込む光と梁の影が遺跡全体を覆いつくしているので、学術的に遺跡を見るというより光と影と遺跡が織りなす空間の楽しさを体感するような感じです。(ht)