ヴァイキング船
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オスロでは発掘されたヴァイキング船を展示している博物館も訪れました。
ヴァイキングの伝統では、船の持ち主が死去すると、生前故人が愛用した馬や生活用具とともに船までも一緒に埋葬したそうです。ヴァイキングの人々にとって船は、それほど生活に密着したものだったのでしょう。そのような船が今でも発掘されることがあるようです。
展示されている3艘のヴァイキング船はいずれも中型で、浅瀬でも航行できること、前後両方向に航行できることなどを基本的な条件としてその形態が決定されているとか。とにかくその形態の美しさは驚くほどです。特に船体の中央部から船首にかけての3次元のカーヴ、船首に立上がった竜骨に向かって船体を覆うオーク材がねじれながら集まってくる様子を見ていると、ヴァイキングの人々の技術の高さ、確かな美意識に感嘆します。そこにはまさに近代の「機能美」が現れているというように思ってしまいます。
一方、船首の竜骨付近には何やら不思議な文様が彫り込まれている船もあります。この文様は想像上の生物が形作る組紐文様です。
また、船以外の副葬品を眺めてみてもそこにおびただしい装飾文様を認めることができます。
ヴァイキング船に見られる洗練された機能美とそれらの不思議な文様が同時に存在していることが私たちにはなかなか納得できません。近代主義建築では装飾を排除した上で純粋な機能美を追求し表現してきました。私たちは装飾と機能美は両立できないと思い込んでいるからです。しかし、そうではないことをヴァイキング時代の人々は示してくれているようです。(ht)