大きなテーブルが迎える民家
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先日、夏休みを利用して北欧のノルウェー・オスロとフィンランド・ヘルシンキに行ってきました。
オスロで訪れた民俗博物館には多くの民家が保存・展示されていましたが、私たちの主な関心は、ノルウェー独特の形態の木造教会(スターヴ教会)だったので、そこを堪能したあとは近くの民家を覗き見するという感じでいました。ところが、教会近くの民家を覗いてビックリ!
入口に正対する壁沿いには、民家の幅いっぱいに大きなテーブルと長く太いベンチがどっしりと設置されていて、外観の素朴な作りに比べてその水平面の精度にとても洗練された意匠を感じました。その民家は商家らしく、大きなテーブルでは商品が売られたり、料理が食べられたのかも知れませんが、入口正面で人々を迎える象徴的な役割をテーブルが果たしています。

もう一軒、内部に家具が設置された純粋な民家でも、やはり入口に正体する壁面に沿って長いテーブルとベンチが設置されています。中央には囲炉裏、上部には採光・換気のための天窓、入口左右には箱型のベッドが整然と置かれています。こちらのテーブルとベンチは先の商家のものよりは素朴な印象ですが、建物幅いっぱいに人を迎え入れるような印象は同じです。



大学生の頃、研究室で住宅プランをスケッチしていたときに、壁沿いにソファーを置く場合には、入ってきた人とソファーに座っている人の視線が正対しないようにと、先生から指導されたことが思い出されます。
日本独特の視線を柔らかく受け流して曖昧に争いを避けるスタンスではなく、入ってきた人と向き合い、敵か味方かをしっかりと確かめた上で招き入れる、ノルウェー民家のテーブル配置にはそんな厳しさを感じました。
寒い地方の民家なので、木造の教会も含めて、多くの民家では入口側の外壁の外側にもう一枚の壁を建て、一部採光のための飾り窓などを設けています。入口が雪で塞がれることを避け、民家が連続するところではそこがアーケードのように連続した通りとなって、ちょうど東北黒石の「こみせ通り」(雁木)のように雪の季節の生活動線になっています。




ここのスターヴ教会の内部は大樹のウロに入ったような印象でした。中で賛美歌が歌われるときっと素晴らしい響きなのでしょう。しかし、やはりこの教会は厳冬の時期に訪れて体感すべきもののように思いました(ht)。
