緑の屋根-民家園3
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雨に弱い棟の部分に植物を植えて補強することは、立派な棟飾ができない民家ではごく普通に行われていたそうで、新築時や屋根ワラの葺替え時にあらかじめ棟の部分に植物の種を蒔いておくそうです。この民家園にもそのようにしてできた棟に、植物が生い茂ったものが見られました。その植物が補強の意味だけではなく、咲く花々によって季節の移ろいを感じさせるものでもあったようです。
しかし、私が驚いたのは意図しないものです。日当たりが悪い北側の屋根で、周りに適度な湿気がある部分に緑の苔がビッシリと育っていました。そのままにしておくと、屋根表面に水分がたまり、ワラの腐敗が進んで、増々苔が活気づくのでしょう。ワラが崩れだして限界に達すると葺替えという改修工事がはじまる。
ここにはそのような状況ではないか、と心配させられるほどに見事に苔が育った屋根を見かけました。それは、なかなかに美しい風景なのですが、民家で暮らす人々にとっては出費を気にしなければならない、悩みの種だったことでしょう。
開業当時の民家園では、周囲の樹木も小さく、明るい公園の中に移築されたばかりの民家が「展示」されていたので、そのような民家と自然の関係にはあまり気付けなかったのですが、50年経ったことで、いろいろと気付くところがでてきたようです。伊藤ていじの「民家は生きてきた」という書物のタイトルがあらためて実感できました。(ht)