曲がり屋の中の竹を編んだ展示用の馬
民家園には主屋としての民家だけでなく、日々の生活に欠かせないような小屋が多く展示されていました。当初は沖永良部の高倉ぐらいだったのですが、水車小屋、船頭小屋、祠、薪小屋、農機具置場などが、それぞれユニークな形態を持っていてとても楽しいです。水車小屋
蚕の祠
物置小屋
沖永良部の高倉をはじめて見たときは、壁がなく、傘のようなボリュームが4本の柱で高く持上げられたその形が面白く、夢中になったことを憶えています。破れ傘の妖怪のように、何か生き物のような愛着もおぼえます。スペイン北西部やポルトガル北部にある伝統的な石造の倉(horreo、espigueiroと呼ばれている)も地上から高く持上げられたその姿から、夜歩く、と言われていたそうですが、柱が生き物の脚に見えてしまいます。
沖永良部の高倉
船頭小屋は今回はじめて見ましたが、壁に設けられた左右2箇所ずつの金輪に2本の横棒を通して駕籠のように4人で担ぐことで、川の氾濫などに備えて移動ができるという優れものです。
前面の障子を開けて中を見ると、コの字型に壁が建ち、奥の壁には川や舟のようす、対岸の客を見るための小さな開口があります。床の前面中央には炉があり、奥は畳敷きの床に長持ちと茶道具などが置かれていて、すこぶる快適そうなしつらえです。前面の障子は一本引きで壁面から飛び出て左右に引き分けられ、その姿は建築家、清家清設計の初期住宅の引戸のようです。その前の庇には中央部を四角く切り抜いたスダレが掛けられ、中で働く人の快適性と機能性をしっかりと追求しているようすがうかがえます。
もうひとつ面白かったのは、傾斜地のなかに掘立柱を建て、木の柵をまわし、屋根をかけただけの薪などの置場です。床は水平の必要もなく、機能上、閉鎖された壁よりも風通しを重視したからこのような小屋になったのでしょう。中は少し骨太の木柵を通してまわりの風景が見え隠れして、なかなか楽しい半外部のスペースです。
オランダで建築家A.ヤコブセン設計の小学校に行ったときに、そこの駐輪場で間仕切りに木板のスクリーンが使われていたことを思い出しました。こちらは、さすがに洗練されていますが、私の中で何となく共通した、気持ち良さをもったスペースになっています。(ht)