M集合住宅の改修
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住宅地に建つ集合住宅の外観改修と外部環境整備の仕事が少し前に竣工しました。
私たちが設計した建物ではなかったのですが、改修を機会に少しイメージチェンジしたいという意向で、私たちにデザイン監修の依頼がきました。
壱番館と弐番館の2棟が通りを隔てて建っています。住宅地に建つこと、ファミリー層が主であることなどから、穏やかでもメリハリのある改修を心掛けました。また、なるべくシンプルになるよう全体を整理しています。
壱番館の外観はポストモダン風のデザインで、凸凹した外観、淡い色合いの塗装が特徴的です。最寄り駅からのアプローチにはゲートはなく、裏口のようにゴミコンテナがむき出しで並んでいます。
ゲート的なものはなく、右手にゴミコンテナがむき出しに並ぶ
中庭への通路にはステップや衝立などが飛び出ている
中庭にはアーチを組合せたパーゴラ3体や井戸のようなもの、駐輪場などが所狭しと並びます。
中央にあるのが井戸のようなオブジェ
改修では敷地入口に簡易なゲートとゴミコンテナを収納するゴミステーションを設けました。住棟外観は既存のデザインを踏襲しつつ、メリハリのある色彩に塗り分けました。
舗装は方向性を強調するストライプパターンにした
中庭への通路は余分なものは撤去し、アルミルーバー天井と間接照明で演出した
中庭はパーゴラ2体を残してその他のオブジェは撤去、動線に合せて集会室前にウッドデッキを設け、その中に4本の桜の木を配しました。
左手あかりがついている部屋が集会室、桜の木3本は枯れてしまったので植え替える
弐番館は、ポストモダン風のデザインは少し弱まりますが、凸凹した外観は共通で、前庭は駐車場と通路、駐輪場で占められ、アプローチ部分にはRC造の大きなゴミステーションがあります。
住棟前面の2段駐輪場が雑然とした印象をつくっている
こちらでは、幸い使わなくなった受水槽置場を新たな駐輪場とすることで、住棟前の2段駐輪場を1段とし、駐輪場前にささやかな植栽と住戸へのアプローチを演出する壁、サイン(照明)を設けました。また、写真にはありませんが既存ゴミステーションは解体し、壱番館同様に簡単なゲートと一体的にデザインし直しました。
低い壁と照明を内蔵したサインが自転車を隠し、人々を住棟階段室へと導く
面白かったことは、中庭にあったパーゴラの処理についてでした。当初はすべて撤去を考えていたのですが、住人にとってはこの集合住宅の印象を形成する要素となっているであろうことを考慮して、一部残す案を模索、途中から参加してくれたサイン担当のデザイナーがパーゴラの形状から考えだした新たなロゴを生み出したことで、一気にこの集合住宅を象徴するアイコンになってしまったことです。
シンボル性の強い形態は使い方次第で様変わりする、とても扱いがデリケートなものだとあらためて実感しました(ht)。