2013年 04月 20日
木造の大空間
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日本の伝統的な木造大空間のひとつ、奈良東大寺大仏殿は朱に塗られた太い柱と梁によってつくられています。内部は薄暗く、なにか生命力のようなものを強く感じます。それは、このブログの最初の頃に紹介した青森県三内丸山遺跡の復元された集会施設?内部空間にも共通する原初的なものです。地面から建ちあがったばかりの空間は、大地との強いつながりを感じさせます。
地面に切石を敷き詰めた大仏殿の柱や梁は製材されて人工的な洗練度が増し、三内丸山に比べれば、幾分か生命力のようなものが弱まっているかも知れませんが、それでもコンクリートや鉄の空間にはないものを感じます。

コペンハーゲン駅舎は西欧に残る代表的な木造建築ですが、曲線を使った表現や上部から射し込む光によって優美な内部空間を実現させています。黒々と影になってあらわれる木材は迫力あるものの、抽象度は増して、鉄骨だと言われても納得しそうです。現代的な駅の案内サインも違和感なく納まっています。

ストックフォルム庁舎の議場には木造架構が架けられています。天井部分が空色に塗られていて、照明の効果もあり、天窓のように上部へと抜けるような不思議な開放感があります。しかし、彩色された木材にはすがすがしさとは反対の呪術的なものも感じます。彩色(化粧)という行為が情念の表現手段のひとつだからでしょうか。

球磨工業高校の象設計集団設計の建物は、木材が赤っぽく塗られているものの、力学的に意味をもったさまざまな図像的な要素が色や形をもって入り込んでいるので、生命感と愛らしさが混ざったような独特な表情です。

私たちが球磨工業高校に建設中の建物は幾何学的で抽象的な全体像なのですが、ユニットを構成する素材に木を使っていること、直交座標系ではない六角形により平面が構成されていることなどによって少し抽象性から脱却しようとしています。生々しい生命感の表現ではなく、また、伝統的な日本の室内空間のように、極度に抽象性を高めて実現させた、繊細で高感度の自然のレセプターとしての内部空間でもない、自然を感じつつ素材がものとして主張する力強い空間(木の洞窟)が実現できれば良いのですが。(ht)

by wstn
| 2013-04-20 16:11
| ht
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