2012年 06月 19日
森の墓地2
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復活の礼拝堂から一直線に伸びて、瞑想の丘、さらに追悼の丘に至る「7井戸の小道」は当初のコンペ案にすでに描かれているものですが、これは最後まで引き継がれた大切な要素のようです。実際に行った経験でもこの小道と瞑想の丘の存在は大きく、これらがないと2分されてしまいそうな、広大で性格が異なる敷地全体を巧みに統合しているように感じます。名前の意味はわからなかったのですが、コンペ案には実際に井戸らしき描き込みが7箇所見られます。瞑想の丘の中央にも井戸らしき石組みがあります。全部実現したらどのようなものだったのか、興味深いです。
復活の礼拝堂側から瞑想の丘をめざす
瞑想の丘側から遠く復活の礼拝堂を望む
このように、森の墓地は長い時間の経過とともに成長?してきた場所です。アスプルンドの明るく平板なスケッチを見ると、彼の伸びやかで開放的な性格を感じます。対してレヴェレンツは思慮深い反面少し頑固な性格だったようです。それがそのまま広い芝生の丘の開放性と森の秘められた豊かさに結びついているように感じます。どちらか一方だけだと単調になりやすい、かといって性格が異なる場を統合するのは難しいものですが、二人の共同がそれを絶妙なバランスで実現させたように思います。
もうひとつ感じるのは背景にある豊かな物語性です。民族が共有する森への感覚、髑髏や天使など信仰にまつわる秘められた存在、礼拝堂や丘、小道の名前、モダニズム的なシンプルさの中の古典主義、ナショナリズムの微妙なバランスなどにより、全体がさまざまに読み取り可能なものになっています。合理主義的な一元的思考ではなく、あいまいさも抱え込みながら多元的に展開する思考により全体がかたちづくられている、ということでしょうか。それらがさまざまな人々と共有可能な場を提供しているようです。
もちろん、季節や天候、時間の変化によりさまざまに表情を変えるランドスケープの魅力は大きく、人々を刺激して物語を生み出します。
アプローチの荒い表情の石畳み
礼拝堂から出ると正面に明るい瞑想の丘がみえる
途中、ガイドツアーに紛れ込み、礼拝堂内部も一部見ることができ、3時間ぐらいをこの場で過ごしたあと、満足しきって帰りました。しかし、あとになっていろいろと考えさせられる経験でした。(ht)
織物のように見える床のレンガ
by wstn
| 2012-06-19 12:23
| ht
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