2012年 03月 27日
Zollverein
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ランドスケープついでに、ドイツ、エッセンにある炭鉱の産業団地、世界遺産Zollvereinについて書いておきたいと思います。1986年まで操業していたという炭鉱の産業団地を、その後、記念公園として整備したものです。全体計画にコールハウスが関わり、何人かの建築家も参加しているようです。さすがに世界遺産なので、画像を検索すると、多くの美しい工場風景が出てきますが、既存の工場跡にちょっと手を加えるだけで、すばらしいランドスケープを実現していることはなかなか伝わりにくいようです。まず、目についたのは工場内にあった線路や配管経路を人々の動線に巧みに活かしていることです。巨大な工場全体に張り巡らされていた物流の痕跡が、今度は人々を滞りなく敷地全体に導く動線になっています。中空の樹々の間の配管経路は物流としては当然でも、人の動線としてはちょっと体験できない視点を与えてくれます。足元はグレーチング床があるだけのシンプルなもの。
下から見た配管経路、人は上部グレーチング床を通り、隣の工場区画にアプローチする
線路は間を敷石で埋めた通路になっていて、きれいな曲線が人々を導くとともに、上から見ると線の重なりが地面に描いた抽象絵画のようです。
左手に見えるのが先の配管経路
舗装面には古い車輪が一部埋め込まれている
一部の建物には手を入れていますが、管理センター棟のコールハウス設計のエスカレーターシャフトは石炭を運ぶベルトコンベアーの覆いと同化していて、工場風景にハマッテいます。
写真上がベルトコンベアーの覆い、下がエスカレータシャフト
建物内はホコリがなくきれいになっていますが、機械類はそのままで、あいだにちょっとした休憩スペースを用意しているだけのところがさりげなくて良いです。
広すぎて敷地全体はとても半日では回れなかったのですが、中央部の施設にはプールや冬季の屋外スケート場、観覧車などのアミューズメント施設も用意されています。屋外スケート場はボイラー冷却用の溜池跡、観覧車も一部が工場内に入り込んでいきます。ここでは、あくまでも工場が主役でその間を少し人間の楽しみの場所に転用させてもらっている、という風情です。
冬季は屋外スケートリンクになる溜池
風景に一体化した観覧車の造形
鉄の機器類がアート作品のよう
いろいろな場所でアート系のイベントが行われているようで、当日もいくつかの作品が屋外にも展示されていました。重要な部分はしっかりと残しながら、現在の活動にもうまく対応しています。まったくあたらしいSANAAの建物は工場敷地の隅で、線路に導かれるような場所に位置しています。
まったく手の付けられていない廃墟の建物があったり、雑草が生い茂っている部分があったりと、すべてに管理の手を入れてしまうことはせず、ポイントをうまく絞りながら施設のもつ特徴と魅力を引き出しているところが良いです。自然相手のランドスケープでもそれは同じでしょう。(ht)
by wstn
| 2012-03-27 19:37
| ht
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