コペンハーゲンの緑
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オランダのようなコペンハーゲンの古い街並み
北欧旅行はデンマークのコペンハーゲンとスウェーデンのストックホルムの2箇所で、1週間弱の日程でしたが、旅先でのホスピタリティーのおかげで内容が濃いものになりました。街中の最初の印象は緑が少なく(街路樹は極端に少ないそうです)何か殺風景なものでしたが、中庭に入り込むと予想外の緑が広がります。中庭の豊かな緑は北欧に限らずヨーロッパの都市空間のひとつの特徴ですが、ほとんどがプライベートスペースのベネチアやローマに比べて公共施設の中庭が開放されていて、私たちが訪れた夏終盤には、短い季節を太陽と緑に囲まれて過ごそうという人々が訪れていました。よく見かけたのがレンガ壁の窓を残して建物を埋め尽くす蔓科の植物です。
ユダヤ博物館の外壁
多くはきれいに刈り込まれていて、そのまま生きた緑の壁です。西欧で木を刈り込むのは円錐形や直方体、果ては動物の形象などで、積極的に植物を造形しようという態度です。ところが、ここではもう少し控えめで、少し人間の役に立つように形象を作りこむといった感じでしょうか。
デンマークを代表する建築家アルネ・ヤコブセンの建物では日本の生垣のような手法を多く見ることができました。目の高さかそれよりやや高い生垣が内外の視線をうまくコントロールしています。
小学校と道路を仕切る生垣と街路樹
集合住宅地の道路と建物を仕切る車の高さの生垣
住宅地付近の海岸のコンクリート防波堤を覆う植物
ヤコブセンは建築家でなければ庭師になりたかったほどなので、植物と建築を共存させるさまざまな試みがたいへん興味深い建築家ですが、やはりデンマークの建築家で有名なシドニーオペラハウスを設計したウッツォン設計の戸建集合住宅でも、低い生垣が独特の街路空間をつくりあげています。L型平面住宅の小さな庭の壁面は中央部では跨げるほどに低く、外部との連続性を大切にしているのが良くわかります。
建物外壁に連続した塀が中央部で低くなる
その他には木製フェンスも昔の日本の板塀に似たものやちょっと変わった柳の枝を編んだものなどさまざま見られ、植物への対応に日本と似ている部分を感じました。
よく見かける柳の枝を編んだ塀
バイキングの国と聞いていたので、荒々しく世界を征服していくようなイメージをもっていたのですが、自然に対しては日本に共通する控えめさを感じて、ちょっと意外でした。(ht)